標高3,776メートルの富士山に登るのは、近所の山にハイキングにいくのとはわけが違います。
冬山に登るような特別な装備は必要ありませんが、砂礫帯あり、岩場あり、急な登りありといった登山道を何時間もかけて歩くことへの準備や、変わりやすい山の天候・3,000メートル以上の高地の寒さへの備えも必要になってきます。
ここでは夏の富士山登山に向けて、初心者の方がまず準備すべき装備品、服装、その他の持ち物をまとめました。
これだけは揃えたい!夏の富士登山に必要な装備
登山靴(トレッキングシューズ)
滑りやすい砂礫帯やゴツゴツとした溶岩帯が続く登山道を長時間歩く富士登山で、最も気を使いたい装備といえば、やはり登山靴ですね。
靴底が柔らかく足首が覆われていないローカットタイプのスニーカーでは、グリップ力や安定感に欠けるために疲れやすく、ひいてはケガの原因にも繋がります。
ただし登山靴と言っても、夏の富士山に登るのに本格的な革製の登山靴は必要ありません。比較的軽量な軽登山靴・トレッキングシューズを選びましょう。
靴底はやや硬め、靴の形状はくるぶしまで覆うハイカットタイプのものが良いですね。ハイカットタイプの登山靴は足首をしっかりサポートしてくれ、捻挫などのケガを防止してくれます。また砂利などが靴の中に入るのも防いでくれますよ。
そして最も重要なことは自分の足にフィットしているかどうか。足の長さだけではなく幅や甲の高さも重要な要素です。何足か履き比べをして、自分の足の形状に合ったものを選ぶようにしましょう。
防水透湿性のゴアテックス生地等の素材のものを選ぶと、雨から濡れるのを防ぎ、汗・蒸れを放出してくれるのでより快適な登山ができるでしょう。
ザック(バックパック・リュックサック)
ザックも富士登山に必要最低限の装備のひとつですね。こちらも登山専用品は、背中の群れを防ぐように通気性の高いシステムが採用されているなど、登山に適した工夫がされています。
1泊2日~2泊3日の富士登山に適しているのは30L前後の容量のもの。実際に背負ってみて体にフィットするかどうかを確かめることが大切です。
雨が降った時の備えとしてザックカバーもあった方がいいですね。(ザックカバーが標準装備されたモデルも増えています)
トレッキングポール(ストック)
必需品というわけではありませんが、トレッキングポールは足腰の筋肉や関節にかかる負担を軽減し、歩く際のバランスを保ったり推進力をサポートしてくれます。体重と荷物の負荷が足に集中する下山時には特に有効で、非常に役立つ存在です。
不要時にはザックにくくり付けられるように、コンパクトに折りたためるものがいいですね。
ヘッドランプ
山頂でご来光を迎えるための夜間登山には必須アイテムとなるのがヘッドランプです。懐中電灯と違って両手がフリーになるため、安全な歩行ができますね。
また山小屋で夜中にトイレに行く時や、想定外の夜間行動といった万が一の非常時にも役立ちますよ。
雨天時に備えて防水性能があるもの、長時間連続使用ができるもの、角度や光量がかえられるものがいいでしょう。予備の電池も持っておきたいですね。
夏でも山頂は真冬!富士山頂でのご来光に必要な服装
富士山では登山口と山頂では気温や風などが大きく変化します。こうした変化に対応するための服装の基本はレイヤリング(重ね着)です。
五合目・登山口ではアンダーウェアとシャツで歩き始め、八合目あたりで気温が下がり寒く感じるようになったら防寒着かレインウェアを羽織る。
山頂では防寒着、レインウェア、帽子、手袋などを着込みがっちりと防寒対策をする、というように温度や天候に応じてウェアを着たり脱いだりすることで快適な行動ができるように調節するわけですね。
こうしたレイヤリングに必要な服装・ウェアをご紹介します。
アンダーウェア
日常生活で身につける下着の素材として一番馴染み深いのは綿ですが、たくさん汗をかく登山では、一度濡れると乾きにくい素材の綿は不向きです。
汗を素早く吸い取りすぐに乾く、吸汗速乾性の高い化繊素材のものを選びましょう。
シャツ
アンダーウェアの上に着るシャツ(夏は肌の上に直接着ることも)も、アンダーウェアと同様に吸汗速乾性素材のものを選びましょう。
長袖のものの方が転倒時のけがや岩場などでの擦り傷の防止、また日焼け対策にもなるのでおすすめです。
パンツ(ボトムス)
パンツに求められる機能はまず第一に伸縮性があること。動きやすさが最も大切な要素です。そして、やはり吸汗速乾性の素材のものがいいでしょう。
登山に絶対NGなのはジーンズ。伸縮性がなく、濡れると重くなるうえになかなか乾きません。
対する登山用のパンツは立体的な裁断がされていたり、ストレッチ性のある素材を使っていたりと、動きやすいようにできているのが特徴です。
機能性タイツ
テーピング効果で膝関節や股関節をサポートしてくれる機能性タイツは、ショートパンツと合わせるファッショナブルなタイプなどもあり、山ガールには人気のアイテムですね。
脚力に不安がある人や、足腰への負担を少なくしたい人にはおすすめです。特に下りでは膝や太ももに負担がかかり続けるので、健康な方にもおすすめできますよ。
防寒着
富士山頂の朝は夏でも真冬並みの寒さ。ご来光を待つ前の時間帯は防寒対策は必須です。
速乾性があり着心地のいいフリースジャケットや、軽量でコンパクトに収納できる薄手のダウンジャケットがおすすめですよ。
レインウェア(雨具)
富士山では天候が急変することはよくあること。急な雨の時に全身を守ってくれるのがレインウェアです。
また強風の時の風よけとしても活躍してくれ、ご来光前の山頂では防寒着(アウター)としての役目も果たしてくれる、富士登山の必須アイテムです。
登山用のレインウェアはゴアテックス等の防水透湿素材を使ったものが一般的。雨は防ぎつつ、衣服の中の湿気は外へ放出してくれるものですね。
ジャケットとパンツに分かれた上下セパレートタイプのもので、コンパクトに畳めて携行性に優れているものを選びましょう。
中にフリースなどの防寒着を着ることも多いので、少し余裕のあるサイズのものが良いですね。
ソックス
ソックスは靴ずれ防止、足にかかる衝撃を吸収する役目を担っています。他のウェアと同様、靴の中が蒸れないように吸汗速乾性のもので、クッション性に優れた中厚手のものがおすすめです。
最近はより高いフィット感が得られる、右足用・左足用に設計されたモデルも登場していますよ。
トレッキンググローブ
富士山頂は風が強く手先が冷えます。寒さ対策、また紫外線対策としてもグローブがあると快適です。
雨の時の対策として、防風性に加えて防水性のあるものが良いですね。ゴツゴツとした岩場を手をつきながら登る際にも役立ちますよ。
小物にも気を配りたい! 富士登山におすすめの持ち物
帽子(キャップ・ハット・ニット帽)
富士山では樹林帯を過ぎると太陽光を遮るものがなくなります。また高度が高くなるほど紫外線は強くなります。
帽子は強い日差しをさえぎり、紫外線対策・熱中症対策として役立つものです。キャップタイプにするかハットタイプにするかはお好みで。
あご紐があるハットタイプの帽子は風で飛ばされにくく、帽子を脱ぎたいと思った時に首元にぶら下げておくことができます。キャップタイプにはクリップで帽子を衣服に留めるアイテムを使うといいでしょう。
どちらも雨・蒸れ対策として防水透湿素材のものがおすすめです。
サングラス・ゴーグル
サングラスも強い紫外線から目を守ってくれるアイテムです。選ぶ際の注意点として覚えておきたいのが、レンズの色の濃さと紫外線をカットする効果は関係ないということ。
色の濃い薄いで判断するのではなく、必ず「紫外線カット機能」のあるものを選びましょう。
ゴーグルは紫外線対策の他に、特に下山時の砂ぼこりから目を守る役目を果たしてくれますよ。
スパッツ(ゲイター)
靴の中に雨や砂・小石が入るのを防ぐ役割をするのがスパッツ。特に「砂走り」や「大砂走り」を下る際に有効です。
行動食
こまめに食べることができて、エネルギー源となる糖分が含まれているものとしてチョコレートやアメなどが行動食の代表選手です。ゼリー飲料なども効果的ですね。
汗をかくので塩分が補給できるものも必要。ナッツ類やせんべい、梅干しなどが良いでしょう。
ハイドレーション・水筒・ペットボトル
荷物の中で最も重いのは水。ハイドレーションは水をザックの中に入れたままで水分補給ができる便利アイテム。
こまめな水分補給は高山病予防・疲労軽減にも役立ち、両手がフリーになるのも安全登山につながります。
ハイドレーションを使わない場合は水筒、もしくはペットボトルで水分を補給しましよう。
日焼け止め
上でも書いたように、高度が高く太陽光を遮るものが何もない富士山では強い紫外線が降り注ぎます。
女性だけではなく男性も日焼け止めを使った方が安心です。汗をかくので汗に強いタイプのものがおすすめ。汗を拭いた後など、何度か塗り直すようにしましょう。
最近では汗を気にすることもなく、塗り直しの必要もない「飲む日焼け止め」というものも発売されているので、こうしたサプリメントを活用するのもいいでしょう。
カイロ
富士山頂は夏でも氷点下になるなど、想像以上に気温が低くなることがあります。重ね着にプラスしてカイロがあると寒さ対策になりますよ。
タオル
汗拭きとしてはもちろん、キャップの後ろに挟んで首の日焼け防止に、寒い時には首に巻いて寒さ対策に、下山時に口に巻いて砂除けに、緊急時には包帯や三角巾として、と便利に使えるアイテムがタオルです。
数枚持っていると色々と役立ちますよ。
小銭・現金(100円玉)
富士山ではトイレを利用するのにチップが必要です(1回200円~300円)。小銭(100玉)で1,500円程度を用意しておくと安心です。
携帯電話
富士山でも携帯電話が使えるようになり、登山の様子をSNSにアップする人もいるようですね。
こうした用途以外にも、万が一救助が必要になった時や友人とはぐれた時などに携帯電話は役立ちます。
登山中など使わない時は電源を切っておくとバッテリーの消耗が防げますよ。
ビニール袋(ゴミ袋)
富士山では自分の出したごみは必ず持ち帰るのがルール。トイレなどに置いていくのは厳禁です。
ゴミの持ち帰り用として、また濡れた衣類などを入れたり、小分けにしたものを入れたりと便利に使えます。
ファーストエイドキット・保険証
富士山の各登山ルートには救護所もありますが、念のために体調不良や転倒によるケガなどに備えてファーストエイドキットと保険証も用意しておきましょう。
絆創膏、消毒薬、虫刺され薬、鎮痛解熱剤、胃腸薬などがあれば安心ですね。
耳栓・アイマスク
富士山の山小屋での宿泊・仮眠は大部屋での雑魚寝が一般的。他人のいびきや小さな明かりなどが気になって眠れない人は耳栓やアイマスクがあると便利ですよ。
地図・コンパス
距離やコースタイムなどが記載されている地図で、ペース配分やコースを確認しながら登りましょう。
視界が悪い時にはコンパスが役に立ちますよ。
「富士登山用品レンタル」を上手に活用しよう!
夏の富士登山に必要な装備品をご紹介してきましたが、登山靴やザック・レインウェアなどは、防水透湿素材を使用した登山専用品になるとかなりのお値段になってしまいます。
登山初心者の方がこれだけのものを一度に揃えるのはちょっと大変かもわかりませんね。そんな時にぜひ活用していただきたいのが「富士登山用品レンタルサービス」です。
富士登山必需品がセットになったものから単品のレンタル、また男性用と女性用が選べるほか、子ども用のレンタル品も揃っています。
当サイトでも別ページでレンタルサービスの詳細をご紹介していますので、こちらもぜひご参考になさって下さいね。
夏の富士登山【装備・服装・持ち物】チェックリスト
□登山靴
□ザック
□トレッキングポール
□ヘッドランプ
服装
□アンダーウェア
□シャツ
□機能性タイツ
□パンツ
□防寒着
□レインウェア
□ソックス
□トレッキンググローブ
□帽子□サングラス・ゴーグル
□スパッツ
□行動食
□ハイドレーション
□水筒・ペットボトル
□日焼け止め
□カイロ
□タオル
□小銭・現金(100円玉)
□携帯電話
□ビニール袋
□ファーストエイドキット
□保険証
□耳栓・アイマスク
□地図・コンパス